飼育方法のポイント

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更新日 2011-10-23 | 作成日 2008-08-16

基本ポイント

1. 使用水について
水道水、井戸水がのぞましい。(一定水の確保)
但し、水道水を使用する時は、カルキ(塩素)を除去すること。 カルキぬきは横浜の場合、ガラス60リットル標準水槽で市販ハイポ2粒でよい。ハイポを沢山いれると入れすぎ で酸欠による死亡がおこる。
2. 水替えについて
金魚の立場になって行うこと。(金魚も風邪をひく)
金魚は体温が変動的であるために、急激な水温の変化が、病気の原因になる。午前中の天気の良い日に行うこと。(金魚は温帯動物である)
1日中の水温の変化を5度以内になるよう容器を考えてやる。水槽が小さかったり、日照時間の短い場所での飼育は、水温の変化を少なくするためにサーモスタット(温度調節機)等で冷えないようにしてやるといい。
3. 酸素の補給について
エアーポンプで補給する。(空気中の酸素量と比較して水中では非常に少ない)
えさを与えすぎて水を腐敗させたり、夏場など水温が上昇すると水中の酸素は非常に少なくなり、金魚がアップアップする。
4. えさについて
与えすぎ に注意する。(水を汚染し、酸素欠乏による死亡の原因となる)
金魚は1週間や2週間えさを与えなくても死ぬことはない。
与え方が適当であると水槽中の微生物や藻類が水をきれいにしてくれる。
生えさ、配合飼料とも新鮮なものをあたえること。
カビや、腐敗や害虫等におかされたえさは、金魚の腸炎の原因となる。
5. 魚病について
食塩による応急手当をマスターする。(魚病のほとんどは塩で治療できる)
食塩は金魚の呼吸を助け、一部の害虫や菌をおさえる作用がある。
使用量は水10リットルに50グラムである

正しい治療法を専門家に聞くこと。(専門家は薬の正しい使い方を教えてくれる)

濃厚食塩処理手順(並塩)

1)2面の洗面器(50cm程度)を準備する。
片方にエアーが送れる状態でのセットが理想です
2)一方の洗面器に下記の準備をする。
更水10ℓ(*1) +並塩500g(*2) = 5%
*1 水温調整をした上での更水10ℓ(塩素を抜いた更水)
*2 味塩は使用不可(必ず並塩を使用する)
※塩の量は必ず「秤」を使用して量る習慣を身につけてください。
3)残りの一方に、水温調整をしたうえで8分目の更水を用意し、適宜に強弱調整を施してエアーを送る。(塩素を抜いた更水)
4)2)の洗面器に濃塩処理する魚を入れ、1分30秒の時間、自然に泳がせる。
必ず、時計で時間を確認しながら実施する。
5)時間が経過したら、魚を出して別に用意した更水の洗面器に移す。
6)しばらくして、通常に泳ぐ様になったら飼育池に戻すか症状に適した薬浴槽に移し、適切な薬浴を実施する。

※濃厚食塩(並塩)処理は、病魚の治療の他、定期的な病気予防、新しく魚を持ち込んだ時、品評大会・研究会など他の魚と一緒にした後で持ち帰ったときなどに実施する事が効果的です。

魚の運搬

1)当会で使用を推奨している、二重角袋の使用をお勧めします。
※二重角袋は、当会所属のペットショップで販売しています。
2)魚の運搬には、厚みのある発砲スチロール箱を使用すると便利です。
※発砲スチロール箱は、内径が二重角袋の底にあった物を使用する。
※スーパーなどで分けてもらうと入手できます。
※止むを得ず事務局から借りた場合は、速やかに返却してください。
3)二重角袋は水を入れた後、必ず底の皺を引っ張って延ばしてから魚を入れて使用すると、運搬中の怪我の防止となります。
4)酸素ボンベを常備し、酸素を注入したうえで輪ゴムなどにより封をし、できる限り明るい状態で運搬する事が理想です。
※酸素ボンベは、当会所属のペットショップで販売しています。
5)魚を運搬する時の水は、状態が良ければ飼育水をそのまま使用するのが理想ですが、できるだけ状態の良い更水を使用しましょう。

1年の計画の立て方と実行

 らんちゅうの楽しみ方は、千差万別です。例えば、小さな設備を利用して産卵させ、その後の成長過程を楽しむ人、春の風物詩となっている黒仔の分譲から飼育を始める人、初秋に当歳魚としての形がある程度決まってから買い求め、品評大会を目指す人さまざまです。

  しかしながら、らんちゅう飼育は非常に奥の深いものですから、科学的データの蓄積や年間スケジュールに従った飼育計画にのっとり、目標に向かって進みませんとなかなか成果が得られないのも実状です。らんちゅう飼育は、55年飼育を続けている私の場合でも、年毎の季節変化を考慮しますと、たったの55回の経験と言うことになります。

 それ故、 私は、別表に示しましたように、主な年間スケジュールと課題を挙げ、毎年、その課題の中から、解決しなければならないテーマを一つにしぼって目標を立てるようにしております。ちなみに、今年の課題は、稚魚の成長に重要な役割を担っている初期飼料のブラインシュリンプに焦点をあてることにしました。それは、ブラインシュリンプの栄養強化と同時に免疫賦活効果を兼ね備えた二次培養液が市販されるようになったからです。

 それ故、私は、別表に示しましたように、主な年間スケジュールと課題を挙げ、毎年、その課題の中から、解決しなければならないテーマを一つにしぼって目標を立てるようにしております。ちなみに、今年の課題は、稚魚の成長に重要な役割を担っている初期飼料のブラインシュリンプに焦点をあてることにしました。それは、ブラインシュリンプの栄養強化と同時に免疫賦活効果を兼ね備えた二次培養液が市販されるようになったからです。

※初春の管理の方法など、シーズンの始まりにあたってのポイントを示したものをアクアウェーブ'03年2月号に掲載しました。興味のある方はご覧下さい。

  例) ’03年 らんちゅう飼育の主な年間スケジュールとその課題

スケジュール課  題
2月
越冬・餌止め(上旬)
越冬明け(下旬)越冬明け魚の健康度チェックと分離飼育最初の水替え
3月
産卵準備健康な種親魚の選定
4月
産卵と孵化
初期飼料良質なブラインシュリンプ卵の確保ブラインシュリンプの栄養強化と免疫賦活法
5月
産卵と孵化
稚魚の選別淘汰産卵後の親魚の管理
6月
選別作業
梅雨時の水替え稚魚の病気の対策ハシカえら病の克服
7月
盛夏飼育への準備
餌の種類と切り替え初期飼料(ブラインシュリンプ)から成魚用飼料への転換
8月
盛夏の水作り
当歳魚の退色水替え頻度と魚の成長夏バテ防止
9月
品評大会に向けての仕上げ秋えら病対策
10月
品評大会ウイルス死対策
11月
越冬準備品評大会出品魚の休息法
12月
越冬・餌止め越冬水温の把握と緑藻水の維持
1月
越冬・餌止め越冬水温の把握皮膚病魚のチェック

梅雨時のらんちゅう飼育のポイント

 梅雨寒時の一日の適正な水温変化について述べさせていただきます。通常、ベテラン飼育者は、後輩を指導する際に、 「らんちゅうを飼育する上で1日(24時間)の適正水温変化は5℃位にしなさい」と指導するものです。しかし、初 心者から見れば、どのようにして5℃以内にすればよいのか分らないのが通常です。そこで、5℃以内での水温変化の パターン例を図.1に示しました。

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 図.1に示しましたように、良い例は、らんちゅうにストレスを与えないように5℃の水温変化が前日の高温 ピーク(14:00とする)の25℃から翌日の朝(06:00)までゆっくりと20℃に低下しております。
 一方、悪い例は、低下が始まって1時間位でほぼ5℃下がってしまっています。これは一般的に水温の急激な変化 というものです。これを繰り返しますと風邪引きの原因になってしまいます。またこれら2例に対して、図に示しませ んでしたが、温度一定で飼育する場合があります。しかし、この方法は、ホルモン代謝が少なくなり、産卵行動等に 悪影響を及ぼしますのであまり推奨できません。
 このことから、梅雨時を上手に乗り切るためには各自の飼育槽の水温変化を測定し、飼育槽の大小に関係なく、 よい例に当てはまるような保温対策を考えてみてはどうでしょうか。

 ヒントは、飼育槽の断熱効果を高めることです。

秋の病気治療のポイント

1.らんちゅうの病気とは何か

 らんちゅうの病気について考える時、私は何時も元観音崎生物研究所長の亡き四竈(シカマ)先生を思い出します。先生は、日本で初めて、タイの人工孵化に成功した人ですが、私の「金魚の病気とは何ですか」の質問にその答えとして、「金魚の病気と健康の違いは、羅針盤の針の振れのようなもので、通常、病気と呼んでいるほとんどの場合が、この振れの大小を取り立てているに過ぎないことです。」と教えていただきました。そう考えると金魚も人間と同じように、治療よりも予防が大切であると同時に、正しい飼育が基本であるということになります。

 特にらんちゅうのように、人間によって人工的に飼育されている場合には、病気のうち90%以上が飼育者によって自然本来の「生」を撹乱させられた結果であるといっても過言ではないと考えます。したがって、らんちゅうが弱いから病気になり死んだのではなく極論すれば飼育者によって殺されてしまっているのです。

 それ故、らんちゅうの病気とは何かを考えるとき、らんちゅうの自然本来の生を撹乱させない正しい飼育環境の確保が重要と考えます。

 2.らんちゅうに最も多い病気・えら病

 2-1.はしかえら病

 現在、らんちゅう飼育者の多くが体験する病気にはしかえら病(小生が勝手に命名しました)があります。症状は両えらがめざしのように開き、稚魚期ですと全滅することがあります。ただし、この病気の特徴は、らんちゅうが感染し、完治しますと二度と発症することがないことです。水産学会等では、、細菌説、ウイルス説の両論がありますが私は、ウイルスが原因と考えています。

 その理由は
  1)今まで元気だった稚魚が急に泳がなくなる。
  2)両えらが開き餌を食べなくなる。
  3)一度発症して完治した飼育槽の魚や水を未感染槽へ添加しただけでも発症するからです。

 対策としては、らんちゅうを絶対安静にし、(0.5%~0.6%の食塩水浴を行う)浸透圧調節が完了するまで数日間放置することです。

 その時の水温は20℃~32℃と幅がありますので、自然体で治療すべきです。なお、らんちゅうが泳ぎだしたからといって急に消化吸収の悪い餌を与えますと、腸が弱っておりますので、松かさ病等の2次感染を誘発させてしまいますので注意してください。

 赤虫等水分の多い餌を少しずつあたえてらんちゅうの内臓の機能回復を図ってやるべきです。

 2-2.秋期に発生するえら病

 秋期に発生するえら病を大別しますとエロモナス菌等が原因で発生するえら病とカラムナリス菌が原因で発生するえら病になります。

 前者の方は、比較的病気の進歩が遅いので、片えらを閉じているらんちゅうを見つけ次第、濃厚食塩浴(水10リットルに塩500グラム入れ、90秒らんちゅうを入れる)を行えば、大抵の場合、完治することが多いのです。一方、後者のカラムナリス菌の方は前日にえら蓋を閉じて飼育槽の片隅にじっとしていたらんちゅうが次の日には死んでしまったという例がよくある位病気の進歩が早いのです。この細菌は、動的細菌という言葉から推察できますように、一旦、えらがこの細菌に犯されますと、非常に速いスピードで病状が進行してしまいます。それ故、発見が早ければ上記の濃厚食塩浴が有効ですが、一般的には予防が重要です。

 予防方法としては、

1)餌の消化不良が原因で飼育水質を悪化させないこと(現在市販されている固形飼料は、消化吸収率が80%程度ですから、残り20%は飼育水中に溶け出し、水質を悪化させる)

通常、餌は1日分を何回かに分けて与えますが盛夏時(高温)の習慣が抜け切れず、夕方の水温の下降時に、固形飼料を与えたために、消化不良を引きおこし、飼育水中のアンモニア濃度と浮遊粒子濃度を上昇させてしまうのです。

2)1日の水温変化を大きくしないこと

らんちゅう飼育した経験者は誰でも秋期の水替え時には、緑水の割り込み量には苦労します。秋期といっても日中は水温が上昇しますので、うっかり緑水量を多くしますと、晴天が続けば2日位でまた水替えをしなければならなくなります。そうかといって、割り込み量が少量ですと、天気が悪ければ、植物プランクトンの増殖が鈍く、保温効果が出せないだけでなく、アンモニア濃度が大きくなり、カラムナリス菌にえらが犯される原因を作ってしまいます。

3)飼育槽、飼育条件の異なるらんちゅうを合流させないこと

飼育槽が異なれば各飼育槽ごとに、常在菌が異なります。つまり、同一飼育槽内のらんちゅうは、、常在菌には、慣れていますので、ストレスは感じません。しかし、常在菌が異なる他の飼育槽のらんちゅうが1尾でも混入しますとそのらんちゅうからの持込により、(飼育槽内が落ち着くまでは)ちょっとしたパニック状態です。特に他家産の魚を購入した場合や研究会または、品評大会等後に、魚病の発症がみられるのはこのことです。

  2-3.ウイルスによるえら病

 品評大会に出品したらんちゅうが急死することが各地で報告されています。症状を分類しますと、

1)体部や尾部に棒状白点が現れる。
2)体の表面は異常がないのに、ぽっくり死する。
3)えら葉が極度に貧血状になる。等です。

 これらは、ヘルペスウイルス、イリドウイルスが原因といわれておりますがパーフェクトな対策はありません。
 やってみる対策としては、ウイルスに効果のある薬はありませんのであらかじめ免疫ふかつ物質を食べさせておく等の予防が重要です。最近ではスピルリナがビタミンCの吸収を促進するとの報告があります。スピルリナ入り配合飼料の利用や、ブラインシュリンプの二次栄養強化(免疫ふかつ剤入り)をしてらんちゅうの体力増強を図ることをお勧めします。

平成14年度 金城会会報 No.47 寄稿